仙台高等裁判所 昭和27年(う)730号 判決
所論は要するに被告人が窃取した郵便物は何人の所有に属するか証拠によつて明らかにしない違法があるというのであるが窃盜罪は他人の財物を窃取することによつて成立することは言を俟たないところであつて原判示第一の(一)乃至(七)の郵便物はいずれも仙台郵便局郵便課長釜谷精の保管にかかる他人のものであることは挙示の証拠により十分認めうるのであるから、その所有の何人であるかを判示するの要はない、その他記録を精査するも原判決には事実誤認を窺うべき事由や審理不尽の違法等は存しない、論旨は理由がない。
(中略)
原判決は原判示第一の(一)乃至(七)記載の窃取した各米国軍票を原判示第二記載の如く法定の除外事由がないのに拘らずそれぞれ所持した事実を認定しこれを併合罪として処断していることは所論のとおりである。しかし窃盜罪は財産罪であつて刑法がこれによつて保護するところの法益は即ち被害者の財産権であるから、たとえその盜品を犯人が処分したとしても重ねてこれについて横領罪その他の財産罪は成立しないが、同一の盜品についてもその被害法益を異にする他の犯罪は窃盜罪の外に重ねて成立することを妨げるものではない。従つて原判示第二の事実が認められる以上当該軍票が同一被告人の窃取にかかるものであつてもそれは別に窃盜罪と法益を異にする連合国占領軍財産等収受所持禁止令違反罪として成立するものといわなければならない。